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Journal|2020.06.16 Buenos Aires Argentina

外出自粛中のブエノスアイレスにて。全てが静かだ。静寂が延々と続いている。人は自分自身を見つめ直し、静かに進む単調な日々をやり過ごす。日を追うごとに世界に激震が走る。疑念、自省、後悔。人は足を止めるが、自然は豊かに繁茂する。古くから伝わる高尚な歌を静かな声で語る──大地は腕を伸ばし、空中でマントを広げる。
──再び羽を広げ、再びこの風景を差出そう。緑は再び芽を出し、鳥は何年にも渡り飛び続ける、この歌に制限はなく、全ての起源は私から育まれる──その大地は語り、心を痛め、孤独に絶望している。 ──人は静寂の中で灰から再び現れる、傷を修復して癒す静寂は、水と命を徐々に取り戻す──おそらくグアラニー族に古くから伝わる理想の国「悪なき大地」が現実とこの世界を手にして、唯一の大きな庭園でコミュニティ同士が抱擁し繁栄していくのだろう。
ここで語られた世界は、ハファエル・マルチニが作曲した作品を通して描いている。

大地の歌
詩:シルビア・イリオンド 作曲:ハファエル・マルチニ

孤独
孤独な大地
孤独な
風景の声

歌のみが
水の、
山の、海の
波とともに

空を飛ぶ
香りとともに
風を飛ぶ
衣装を纏って

全てが舞い戻る
岸へ
あの風景が
待つ場所へ

塀が崩れ
歩みが止まる
大地はゆりかごを求め
悪に苦しめられる

見よ
この傷ついた悲しみを
聞け
不在の声を
眠りにつく
子守唄は
柳の中で
消えた

葉の間を
歌が舞う
それは秘密の
嘆きの声

私ではない
それは私ではない
再び
大きな疲れがやってくる

少しずつ
鳥が戻ってくるだろう
少しずつ
ツグミが戻ってくるだろう
サギもやってくるはずだ
たくさん戻ってくるはずだ

すべてが戻ってくる
少しずつ
夢と
木々の枝の合間に

全てが戻ってくる
沈黙も
静寂も
空気の中で
人の静寂の合間に
再び
羽が生えてくる

Silvia Iriondo
2020.06.16 / Buenos Aires Argentina

──Journal
SPIRAL RECORDSと交流のあるアーティストが、それぞれの場所で、いま考えていることを日記形式で綴る。(不定期更新)

Silvia Iriondo / シルビア・イリオンド
デビュー当時からブラジルの音楽家 エグベルト・ジスモンチをはじめとする多くの著名アーティストに認められ、現在はアルゼンチンのネオ・フォルクローレ・シーンで最も世界性をもつシンガーとしてその名は国内外で知られている。これまでに彼女の作品にはカルロス・アギーレ、フアン・キンテーロ、キケ・シネシ、リリアン・サバ、ハイメ・ロス、マリオ・グッソ、セバシチャン・マッキ、マルコス・カベーサス、ホルヘ・ファンデルモーレなど、各音楽シーンを牽引する最重要人物が参加している。また、シンガーとしての実力だけでなく、アルゼンチン・フォルクローレのパイオニアで民俗音楽研究家/収集家でもあるレダ・バジャダレスをトリビュートした作品などもリリースし、アルゼンチンに深く根ざす文化を再解釈しながら新たな光を当てる活動も行なっている。