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Column|サンパウロからの手紙──TEMPO SEM TEMPO vol.1

2016年にリリースした、ハファエル・マルチニ、ベルナルド・ハモスとのアルバム«GESTO»で、ブラジル新世代の室内楽シーンを牽引する最需要人物の一人であることを強烈に印象づけた、クラリネット奏者/作曲家ジョアナ・ケイロス。2019年11月に念願の初来日をした、ジョアナ・ケイロスにアルバム«TEMPO SEM TEMPO»の制作背景、そしてサンパウロに戻ったいま、日本での出来事を振り返っていただきました。(2020/04/23 メルマガ再掲 全2回)

──TEMPO SEM TEMPO
このアルバムは、ひとりで参加したアーティスト・イン・レジデンスで制作した前作の『Diários de Vento』の続編的な位置付けです。そのときに初めて一人で作曲と演奏をするプロジェクトを行ないました。その結果は大変興味深いもので、もっと管楽器を掘り下げて、他の楽器と一緒に演奏するメロディー楽器としてではなく、管楽器を主役にしたものに挑戦してみたいと思いました。それから徐々に、ペダルやエフェクト、ループなどに興味が湧き、機材に触れていくうちに自分で作った曲をひとりでライブ演奏する方法を『Diários de Vento』の制作時に見出していきました。いままで考えたこともありませんでしたが、繰り返しがある曲で自然とソロ演奏にも馴染んでいました。その後、ループを使ったソロ演奏の可能性をより探求したくなり、作曲の段階から録音のことだけではなく音の層やライブでの演奏を想定しながら考えるようになりました。他の人があまりやっているのを見たことがないスタイルで、音楽的には室内楽のような性質のもので、ループは長く使い、リズミカルでもないという、とてもおもしろい内容ですね。

私にとってソロ演奏できるこの方法はとても興味深いものです。管楽器奏者としてメロディーを一人で演奏する可能性はもちろんありますが、構成の段階から私だけの演奏を起点として音を組み立てていく作業は、非常におもしろいですし、自由を感じ、自律的な音楽を追求することができます。

──日本のリスナーの高い関心
私の作品に興味を持ってくれて、とても感謝しています。日本のリスナーはとても高い関心をもって聴いてくださっていると感じます。他者や、異なる文化圏の人の世界に浸ろうとする、この様な形での深さや繊細さは滅多に出会えるものではないと思います。自分の作品に対するみなさんの反応は、アーティストの創作意欲をとても刺激します。みなさんからのそういったアプローチがなかったら、私の今は全く違っていただろうと思います。音楽活動を継続することを後押ししてもらったことに感謝しています。

──日本での出来事
全てが新しい初めてのことばかりで、何に出会えるのか全く未知でしたし、どんなことも受け入れるオープンマインドな状態で日本を訪問しました。注意深く音楽に耳を傾けてくださるリスナーのみなさんと直接出会えたことがとても印象に残っています。


──いま、音楽家として活動していること
音楽というのは外国語を学ぶような感覚で、新しいコミュニケーション・ツールだと思っています。他の言語や文化の中で生きる音楽家と対話ができるし、概念や美的感性などは言語では説明しづらいことを、音楽を通してやりとりできます。観客とのやりとりもそうです。これは、人とコミュニケーションをとるためのもうひとつの豊かな方法だと思います。続けていくうちにより深い対話ができるようになりますし、尽きることのない探求であり、毎回発見のある活動なので、新しい音の可能性を試し、様々な人たちと創作活動を続けられたら良いと思っています。

翻訳:宮ヶ迫ナンシー理沙
インタビュー/編集:SPIRAL RECORDS

サンパウロからの手紙──TEMPO SEM TEMPO vol.1(2020/04/23配信)
サンパウロからの手紙──TEMPO SEM TEMPO vol.2 セルフライナーノーツ(2020/04/30配信予定)