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Column|アルゼンチンの黒い瞳──Ojos Negros vol.1

SPIRAL RECORDSからリリースした«ANTIGUO REZO»«TIERRA SIN MAL»でも知られる、アルゼンチンのシンガー シルビア・イリオンド。その長いキャリアのうちでも、現在のスタイルを強固なものとした重要な作品と位置づけられる«Ojos Negros»のリイシューを記念して、本人に本作のコンセプトやものづくりについて伺いました。(2020年4月12日配信メルマガ再掲/全2回)

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──Ojos Negrosとは?

ここでいう黒(Negros)は私たちの音楽に向けられた瞳(Ojos)を指しています。[1]
私たちの文化と音楽の伝統が生まれたフォルクローレに向けられた深い眼差しのことです。 アフロをルーツとして持つ私たちの音楽は、インディオ、コジャの歌声にクリオージョの文化が合わさり、独自のリズムが育まれました。
アルバムのタイトル«Ojos Negros»(オホス・ネグロス)は、アルゼンチンのフォルクローレが生まれたアフロの起源と、その音風景を生み出した独特かつ豊かな文化的背景について言及しています。
そして、アルゼンチンを代表する素晴らしい詩人、アルベルト・ムニョス(Alberto Muñoz)がこのアルバムのために書いた詩がきっかけで作者不詳の作品、インディヘナの歌への追求や伝統を革新する若手の作曲家たちとの交流がはじまりました。

黒い瞳
エリザベス・テイラーのような紫の瞳ではない
私たちの水を盗むためにやってきた
北の海兵隊員のものでもない

ヨーロッパの幽霊のような
疲れた瞳でもない

愛に溢れたお前の黒い瞳
スラム街からやってきた
囚われのモレーナ

ツルと子羊のような瞳

ロカの瞳ではない
馬のものでも
血塗られた囲い場の
インディオのものでもない

愛に溢れたお前の黒い瞳
河口と冷たい密林からやって来た黒い瞳

私はお前の折れたまつげに生き
川で生まれたお前のまぶたは
私を見続けている

アルベルト・ムニョス

──ジャケットのデザインについて

このアルバムは、長い時間をかけて作り上げていきました。さまざまな経験や探求を経て、最終的に織機を構築するというアイデアに至ります。 ジャケットは、アーティストのイネス・アンデルフーレン(Inés Anderfuhren)に依頼し、アルバムのために特注のタペストリーを制作してもらい、その写真を使用しています。 茶色の糸の横糸に2つの大きな黒い目を持つタペストリーで、と黒い瞳と肌を表しています。ジャケットの紙の質感も、タペストリーのテクスチャ―が伝わるように工夫をしました。

デザインを手掛けてくれたアレハンドロ・ロス(Alejandro Ros)は、このパッケージに種を入れることでCD自体が打楽器になる可能性を示唆しました。 これは、楽器の起源と言われる打楽器が生まれた経緯とよく似ています。 すべての誕生の起源である種と、アルゼンチンの音楽の起源であるアフロ。 このように、原点を象徴する種をアルバムの中に入れることで、CDを運ぶ容器としてだけでなく、打楽器にもなるという二重の役割を与え、よりコンセプチュアルなデザインとなっています。

──アルバムの位置づけ

この作品はとても大切です。 さまざまな音色、音楽の発展があり、先祖代々の音楽について多くの可能性があることを示唆しています。 楽器編成に関しては、それぞれの作品の特徴と個性を尊重するために、テーマによって選定しました。 ムビラ、コパ、マリンバ、コントラバスのデュオ、こどものコーラスなど──。それぞれの作品の良さを最大限に導き出し、聴く者をその世界へ誘うための工夫を凝らしています。

[1]
ここで話される「黒い瞳」は先住民族の人々のことをさす。アルゼンチンに昔から住んでいた先住民族、そしてアフリカから渡ってきた黒人の人々の瞳(アフロルーツ)の双方を指していると解釈できる。
また、ネグロ(Negro)という言葉は一般的には差別用語として認識されているが、アルゼンチンでは
ニックネーム的にネグロを使うので、他の南米諸国と比較してもそこまで攻撃的なニュアンスは無いことが多い。言い方や使い方によってはアルゼンチンでも十分差別用語になる。

インタビュー・編集:SPIRAL RECORDS
翻訳:坂本悠

アルゼンチンの黒い瞳──Ojos Negros vol.1(2020/04/12配信)
アルゼンチンの黒い瞳──Ojos Negros vol.2(2020/04/18配信予定)