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Column|フォルクローレ──アルゼンチンの大地の歌声 vol.03 後世の音楽へと続く軌跡

アルゼンチンのネオ・フォルクローレ・シーンで最も世界性をもつシンガーSilvia Iriondo。彼女は自身の音楽活動と並行して、アルゼンチンにおけるフォルクローレの歴史についても長い時間をかけてリサーチを続けています。彼女のフォルクローレに対する深い理解と愛情を垣間見ることができる書き下ろしのテキストを3 回にわたりご紹介します。
第3回最終回(2020/04/12掲載)

フォルクローレ音楽の歌詞が生き生きと輝きを放つこの一連の発展の中で、作曲の世界で目覚ましい動きをみせる音楽家がいます。作曲家・バンドネオン奏者の ディノ・サルーシ(Dino Saluzzi, 1935-)は、柔軟な新しい音楽の聴き方を構築し、メロディーとハーモニーの美しい調和のとれた豊かな音風景を描き出しました。

ピアニスト・作曲家のエドゥアルド・ラゴス(Eduardo Lagos, 1929-2009)、ワルド・デ・ロス・リオス(Waldo de los Ríos, 1934-1977)、マノロ・フアレス(Manolo Juárez, 1937-)、レモ・ピノーニ(Remo Pignoni, 1915-1988)は、オスカル・アレム(Oscar Além, 1941-2017)、イルダ・エレーラ(Hilda Herrera, 1933-)らが試みたようにフォルクローレを別の視点から読み解こうと従来とはまた別の新たな世界を押し拡げました。

ハイメ・ダバロス(Jaime Dávalos, 1921-1981)とエドゥアルド・ファルー(Eduardo Falú, 1923-2013)、クチ・レギサモン(Cuchi Leguizamón, 1917-2000)は、歌の世界の無限の深さを示しました。彼らが切り開いた詩的な音楽のコンセプトは、フォルクローレの基盤に深く入り込むと同時に、普遍性を超越する新しい方向へ向かい歌の世界を開花させました。クチ・レギサモンはこの地平を求め、伝統と革新を同時に押し進めました。

ラモン・アジャラ(Ramón Ayala, 1945-)、ラウル・カルノータ(Raúl Carnota, 1947-2014)、ワルテル・へインス(Walter
Heince, )、チャチョ・ミューラー(Chacho Muller, 1929-2000)、ロランド・バジャダレス(Rolando Valladares,
1918-2008)、ティト・フランシア(Tito Francia, 1926-2004)、フェリックス・ダルド・パロルマ(Félix Dardo Palorma,
1918-1994)など、その他にも今日に到るまで多くのアーティストが既成概念に囚われず、新たな地平で活動しています。

アルゼンチンのフォルクローレは大地の歌声そのものです。無限に変化し続ける現実を地球の南端で歌い続けるのです。歌には文化的景観や民族の独自性の主張、人生における不条理と不正に対する嘆きが込められています。

アルゼンチンのフォルクローレ音楽は生きており、日々進化し、花を咲かせています。それは真なるアルゼンチンが見出すべき夢、苦闘、幻想、美しさを映した鏡でもあるのです。つまり、フォルクローレとは、その土地の人々の暮らし、そして真実の物語が時の歩みを刻みながら忠実に記された証言を一冊にまとめた書物のようなものなのです。

文:シルビア・イリオンド/訳:坂本悠